2020年2月に登場した4代目フィットが、2026年7月の改良でグレード名ごと入れ替わりました。ベーシックやホームといった呼び名は姿を消し、エントリーのX、標準装備を厚くしたZ、SUV風のクロスター、走りに振ったRSという4タイプに整理されています。
パワートレインは、1.5Lのガソリンと、同じ1.5Lに2モーターを組み合わせたe:HEVの2本立て。ガソリンはXとZの2タイプだけで、クロスターとRSはe:HEVのみとなりました。駆動はFFと4WDが選べ、4WDは一律22万円高。RSだけはFFのみの設定です。
ボディは全長3,995〜4,095×全幅1,695×全高1,515〜1,570mm。クロスターだけは全幅1,725mmと、ひと回り張り出しています。
WLTCモード燃費は、e:HEV Xの29.1km/Lが最も良く、クロスターでも27.0km/L。ガソリンのXは18.3km/Lで、この差をどう見るかが最初の分かれ道になります。
安全装備はHonda SENSINGが全タイプ標準で、グレードによる差がありません。今回の改良でトラフィックジャムアシストと急アクセル抑制機能が加わり、渋滞での負担も軽くなりました。
車両本体からの引きは14〜20万円あたりに集まり、真ん中は15万円。オプションを含めた総額では、20〜25万円前後を引き出せれば合格ラインでしょう。
おすすめグレード
選ぶ順番は、まずガソリンかe:HEVか。そのうえでXかZか、という2段構えになります。安全装備に差がない以上、価格差の中身は内外装の加飾と快適装備に絞られます。
下の表は2WDで並べたものです。4WDはどれを選んでも22万円高で横並びなので、迷うところがありません。
| 評価 | グレード名 | 特徴 | 新車価格 | 3年後予想残価率 |
|---|---|---|---|---|
| ◯ | X(2WD) | 装備を絞ったエントリー。それでもHonda SENSINGは全車と同じものが付く 180万円台で買える現行のコンパクトカーとしては、中身がかなり濃い |
180.62万円 | ★★★★★ (約87%) |
| ◎ | Z(2WD) | 改良でRS譲りのシャープな外観になり、シートヒーターとUV+IRカットガラスが標準に 今回集計したなかで残価率が最も高く、乗っている間も手放すときも強い |
214.5万円 | ★★★★★ (約94%) |
| △ | e:HEV X(2WD) | 燃費29.1km/Lはラインアップ最良。ただし装備はガソリンXと同じ水準 新車価格が上がるぶん残価率は伸びず、6タイプで最も低い |
223.85万円 | ★★★☆☆ (約66%) |
| ◯ | e:HEV Z(2WD) | 燃費28.4km/LとZの装備を両取りできる、いちばん素直な選択 ガソリンZとの差額を燃料代で埋められるかが、そのまま損得の分かれ目になる |
249.92万円 | ★★★★☆ (約73%) |
| ◎ | e:HEVクロスター(2WD) | 全幅を1,725mmまで広げ、車高も上げたSUV寄りの1台。燃費は27.0km/Lを保つ e:HEVのなかでは残価率が頭ひとつ抜けており、価格差を取り戻しやすい |
273.57万円 | ★★★★★ (約85%) |
| △ | e:HEV RS(2WD) | 専用スエードコンビシート、スポーツペダル、ワイヤレス充電器まで入る最上位 装備は最も厚いが、中古で同じ値打ちとして扱われるとは限らない |
289.96万円 | ★★★☆☆ (約69%) |
※2026年7月の改良でグレード名が変わったため、残価率は改良前の同等タイプ(ベーシック→X、ホーム→Z)の実績
本命はZです。
Xとの価格差は約34万円。その34万円で入るのは、RSと同じシャープな前後の造形、本革巻の3本スポークステアリング、ブラック基調の内装、シートヒーター、UV+IRカットガラスといったあたりです。走りと安全に関わるものは含まれていません。
それでもZを推すのは、残価率が約94%と群を抜いているからです。装備の満足度と手放すときの評価が同じところで重なるグレードは、そう多くありません。
ここでいちばん引っかかるのが、ガソリンとe:HEVで残価率が逆転している点でしょう。Zの約94%に対し、e:HEV Zは約73%。燃費で10km/L以上の差をつけているe:HEVのほうが、残価率では2割ちかく下に沈みます。
理由は単純で、新車価格の差がそのまま効いているためです。e:HEVは約35万円高いぶん、3年後に同じ金額で戻ってこない。年間1万km程度の乗り方なら、燃料代でこの差を埋めきるのは難しいでしょう。走行距離が多い人ほどe:HEVが有利になる、という当たり前の線引きが、そのまま残価率にも出ています。
e:HEVで選ぶなら、狙い目はクロスターです。約85%はe:HEVのなかで最も高く、e:HEV Zとの差は約24万円。この24万円は、広げた全幅とSUV寄りの見た目に払うお金ですが、手放すときにおおむね返ってきます。
RSは装備で見れば最上位ですが、残価率は約69%にとどまります。専用シートやスポーツペダルは、中古で買う人が同じ価値として見てくれるとは限らない。乗っている間の満足を優先する人向けの選択と考えたほうが正確です。
迷ったら、価格と残価のバランスで選ぶならZ、燃費まで取りにいくならe:HEVクロスターがおすすめです。
気になる競合車種
まずトヨタのヤリスです。ボディサイズも価格帯も真正面から重なり、ハイブリッドの燃費を看板にしている点まで同じ。フィットの商談で名前を出せば、担当者が最も意識する一台になります。
室内の広さと後席の使いやすさはフィットが得意にしている場所だけに、比べられること自体が向こうにとって痛い。だからこそ、こちらから触れる価値があります。
もう1台が日産のノートです。e-POWERはモーターだけで走るぶん、発進から高速域まで静かで滑らか。乗り味の質感を売りにしているので、e:HEVを検討している人の受け皿としてそのまま重なります。
ここで燃費やスペックの数字を並べるのは避けてください。それぞれの得意分野で反論の材料を渡すことになります。名前を出す。伝えるのは、そこまでで足ります。
フィットの値引き交渉で使えるコツ
値引き額の大小だけを追いかけても、あまり実になりません。見るべきは、その引きがどこから出たのかという一点です。車両本体を削ったのか、ディーラーオプションを値引いたのか、下取り査定を上乗せして帳尻を合わせたのか。出どころが違えば、次に押せる場所も変わります。
フィットの場合、本体側にもオプション側にも動く余地が残っています。報告を並べると、本体だけで15万円前後、オプションからさらに5万円前後というのが真ん中の姿。片方だけを詰めて満足すると、もう片方をまるごと取りこぼすことになります。
ただし、いま手に入る報告はほとんどが2026年7月の改良より前のものです。改良直後は注文が一箇所に集まり、条件は一時的に締まります。過去の数字をそのまま突きつけるのではなく、目安として頭に置いておく程度が現実的でしょう。
もうひとつ、フィットで効くのが販売会社の使い分けです。ホンダの正規店は地域によって別会社が並び立っていることがあり、その場合は同じフィットどうしで条件を比べられます。自分の住むエリアがどうなっているかは、商談に入る前に調べておきましょう。
競合見積りは 見せず・匂わせる
ヤリスとノートの見積書は、フィットの商談に入る前に手元へ揃えておきましょう。ただし、その紙をテーブルに広げるのは避けたほうが賢明です。
金額を先に見せてしまうと、営業マンはその数字をほんの少し上回るところに着地点を置き、そこで止まります。数字には触れず、「他でも見積もりをお願いしていて、まだ決めきれていない」くらいの温度で止めておく。
着地点が読めない相手に対しては、担当者も手探りで条件を積むしかありません。
そのうえで、押す場所を1か所に絞らないことが大切です。フィットは本体もオプションも動きます。本体で粘り切ってから「ではオプションも」と続けるより、最初から総額でいくらになるかを一本の話にしたほうが、担当者も上と掛け合いやすくなります。
時期を狙って待つのは、もう古い
決算期まで待てば値引きは伸びる——長く語られてきた王道ですが、改良直後のフィットに限っては分が悪くなっています。グレードを4タイプに整理して話題が新しくなったばかりで、台数欲しさの焦りが店側に生まれにくい状況です。
待つ判断には代償もあります。決断を1か月遅らせれば、納車もそのぶん後ろへずれる。ここが今乗っている車の車検満了と噛み合わなくなると厄介です。
もう一度車検を通すか、代車で凌ぐかの二択に追い込まれ、値引きで削った以上の出費がそこで出ていく。数万円を待って10万円近い車検費用を払っていては本末転倒でしょう。
狙うなら、決算までの数か月ではなく数週間の単位。改良の話題性がひと段落した頃合いを見計らって、一気に詰める。この程度の待ち方が、ちょうどいいと思います。
営業マンが動くポイント
担当者が動きやすいのは、まず月末です。販売台数の締めが迫っていれば、1件の商談の重みが普段とはまるで違ってくる。月の後半に話を詰める段取りにしておくだけで、引き出せる条件は動きます。
週末なのに店内が空いている日も見逃せません。商談テーブルが自分たちだけなら、担当者は時間も気持ちもこちらに集中させられますし、上と掛け合う余裕も生まれる。来店客であふれた日は、どれだけ粘っても「では次回に」で流されて終わりです。
そして聞き方。「いくら引けますか」と迫るのは、実はいちばん通りにくい形です。
「この条件なら今日決めます」
こう言い換えるだけで、担当者にとっては社内で通しやすい話に変わります。
基本姿勢は、買う意思が固いことと、他社も本気で比べていることをセットで伝えること。「条件が合えば今日サインする」と「ただヤリスとノートの見積もりも取っている」を必ず同時に出します。片方だけだと、決め打ちと見抜かれて足元を見られるか、冷やかしと判断されるかのどちらかに転びます。
それでも条件が渋いままなら、下取りに話を移す手が残っています。フィットは中古市場での評価が高く、なかでもガソリン車の値持ちは表で見たとおり。いま乗っているのがフィットなら、その査定額そのものが交渉の材料になります。
決めたい。でも条件次第——この温度感を最後まで崩さないことが、担当者にもう一歩踏み込ませる条件になります。
値引きを迫りすぎると嫌われる!?
近年の需要の多さと納期遅れにより、値段を引かなくても売れるという風潮が強まっている中、
- もっと引いてくれ!
- あと3万なんとかならんか!
- ガソリンも満タンにしろ!!
と、あれこれ迫るのも、少し嫌がられそうで悩んでいませんか?
新車を購入してからが本当のお付き合い。無料点検やリコールなど、同じディーラーへ足を運ぶ機会は増えるのに、最初から値引きを迫りすぎて嫌われるのも困ったもの。
でも安く買いたい。
下取り予定のお車があるなら、お車の値引きを「あと1万円!」としつこく迫るより、下取り車を10万円高く売った方が、精神的にもラクなのではないでしょうか。