アルファードとヴェルファイアは、少し性格の異なる兄弟車。
サイズや基本構造は共通していますが、実際に中身を見ていくと、性格や狙いは大きく異なります。
もともとは30系で終了する予定だったヴェルファイア。以前までは外観だけの違いでしたが、40系でどう変わったのでしょうか。
そもそも立ち位置が違う
2023年6月に40系となったアルファードとヴェルファイア。30系までは主に外観デザインの違いでしたが、現行モデルではコンセプトまで明確に分けられました。
まずアルファードのコンセプトは、王道の高級ミニバン。
法人利用や送迎、ファミリー用途までを幅広く想定し、誰が乗っても違和感のないデザインと乗り味を優先。運転のしやすさや後席の快適性を重視し、多くの人にとって扱いやすいことが軸になっています。
一方、ヴェルファイアのコンセプトは、走りと質感を強めたプレミアム指向ミニバン。
アルファードには設定されなかった、2400ccターボエンジン搭載グレードも設定され、内外装の違いだけでなく、走行性能にも明確な個性を持たせたモデルとなりました。
アルファードがフォーマルな快適性を重視した設計であるのに対し、ヴェルファイアはその高級感に加えて、走りの満足度も高めた設計になっています。
外観の違い
アルファードとヴェルファイアの外観の違いは、主にフロントとリアデザインの違い。
あくまでもフォーマルなアルファードに対し、押し出し感の強いヴェルファイアのデザインはひときわスポーティーに見えます。バンパー開口部も大きく取られ、アルファードのメッキからスモークメッキになるなど、キャラの方向性は明確に分けられています。
サイドビューは大きな違いはないものの、リアビューに至っても大きく分かれます。
アルファードのドット基調のテールランプは、大きな鷲が翼を拡げた雄大なデザインなのに対し、ヴェルファイアは横一文字に光るLEDが特徴で、それぞれの個性を感じさせるデザインとなっています。
内装の違い
基本的に内装デザインは共通。
シートデザインやインパネ形状、レイアウトに大きな違いはありませんが、単一の黒基調となるアルファードに対し、ヴェルファイアはサンセットブラウンの内装色が選べます。
同じZグレードをベースに比較すると、合成皮革シートのアルファードに対し、ヴェルファイアは全グレードで本革シートが標準。アルファードで本革シートが設定されるのは、最上級のエグゼクティブラウンジのみ。
見た目は似ていても、質感は明確に分けられているのです。
搭載エンジンの違い
30系までは同じエンジンでしたが、現行モデルになってからは、エンジンまで性格を振り分けられました。
まず2.5リッターのハイブリッドエンジンについては、アルファードとヴェルファイアで共通。2.5L直列4気筒エンジンをベースとしたハイブリッドシステムで、システム最高出力は250ps。この点に差はありません。
差が生まれるのは、ガソリンエンジンです。
アルファードに設定されるガソリン車は、2.5L自然吸気エンジン。最高出力は182psで、扱いやすさと静粛性を重視した穏やかな特性になっています。
一方、ヴェルファイアは2.4Lターボエンジンを搭載。最高出力は279psを誇り、これは30系まで搭載されていたV63.5リッターの後継とも言える存在。
出力と排気量は、301psから279psへ、3500ccから2400ccへとダウンサイジングされましたが、
最大トルクは361Nmから430Nmへと大幅に向上。加速性能は、むしろ30系以上に進化しています。
つまり、ハイブリッドを選べば両車に差はありませんが、ガソリン車を選んだ時点で、アルファードとヴェルファイアは全く別の車に仕上がったのです。
走行性能の違い:乗り心地とスポーティな方向性
アルファードとヴェルファイアは、与えられるエンジンだけでなく、シャーシや足まわりのチューニングにも差が付けられています。
共通点として、2台ともGA-Kプラットフォームを採用。フロントはマクファーソンストラット、リアはダブルウィッシュボーンサスペンションで、基本構成は両車ともに共通です。
その上で、ヴェルファイアはフロント周りを中心にボディ剛性を強化。ミニバンでありながら、セダンに近い操舵応答と安定感を狙った味付けとなっています。
アルファードは、ロールを許容した快適性重視のセッティング。ヴェルファイアはミニバンの皮を被ったスポーツセダン。
路面からの入力をいなすような乗り味のアルファードと、スポーツカー並みの応答性能を持つヴェルファイア。同じ搭載エンジンで比較しても、乗った瞬間すぐに体感できるほど、走りの印象が変わる仕上がりになっています。